熱が下がりました。みんなすばるです。
杉田水脈議員の炎上の件について、再度記事を書きます。
(「またかよ」って思う方もいるでしょうが笑)
今回の件で、
「LGBT(セクシュアル・マイノリティ)のなかでも色んな立場があるんだなあ」
と思った人が多いのではないでしょうか。
しかし、その多様性をまとめたサイトがあまり見当たらないので、
とりあえずまとめてみました。
もし欠けている論点があればコメントなどで教えてください!
- 炎上に関する事実の確認
- ① チャンネル桜の動画(短縮版)
- ② 『新潮45』への寄稿文
- リベラルなメディアの「親LGBT」姿勢への違和感
- LGBTのために税金を使う=行政が動くのは悪い
- LGBとTは分けるべき
- LGBTや多様性を報道することは悪い
- 統計への「反論」
- 性自認に合わせたトイレ使用への「反論」
- 反性別二元論・セクシュアリティの多様性への「反論」
- 「ドミノ理論」
- ③ 杉田水脈議員のツイート
- 炎上の論点
- 政治利用するな vs 何事も政治的で、あなたも政治利用されている
- 騒ぐべきじゃない/騒ぐからみんな偏見をもつんだよ vs きちんと反論する必要がある
- 差別などない/耐えられる差別だ vs 差別されている
- 〈支援〉は不要だ vs 必要な〈支援〉もある
- 〈生産性〉で優先順位をつけて何が悪いの? vs〈生産性〉で人を測るのは非人道的
- おわりに
炎上に関する事実の確認
まず何よりも、事実確認をしましょう。
今回の炎上事件では、杉田水脈議員は3つの点で関わっています。
① チャンネル桜の動画(短縮版)
「Japan’s Secret Shame」のツイッターアカウントで流れたもの。
元の動画は約29分であり、その一部が2分弱にまとめられています。
当事者にはかなり精神的に来るものがあったりするので、【閲覧注意】です。
彼女が、国民の選んだ日本の現職の衆議院議員です。 #杉田水脈 #LGBT pic.twitter.com/JerWbVzVDF
— Japan’s Secret Shame (@JPNSecretShame) July 19, 2018
内容をまとめると、
同性愛者に税金を使って(少子化対策よりも優先して)支援をする大義名分がない。
- なぜなら、「生産性」がないから。
LGBTについての学校教育は”当然”不要である。
- なぜなら、同性愛者が自殺する可能性は異性愛者の6倍かもしれないが、それでも、教師は「モンスターペアレント」や「学級崩壊」といった優先するべき問題がほかにあるから。
- なぜなら、教師が正しい知識を教えられないから
- なぜなら、「正常」な異性愛者が「異常」な同性愛者になって、「戻って」これなくなるかもしれないから
ただ、この動画は上の内容のほかに、
『同性愛の子供は普通に正常に恋愛ができる子どもに比べて自殺率が6倍高いんだ』と。『それでもあなたは必要ないっていうんですか』みたいなことを(笑)
というふうに、「同性愛者の自殺を笑っている」点もかなり大きい要素なんじゃないかな、と思いますね。
② 『新潮45』への寄稿文
こちらは、ごくごく簡潔な要約になります。
リベラルなメディアの「親LGBT」姿勢への違和感
- なぜなら、日本に差別はなく、親の無理解のほうが生きづらさを生んでいるから。
- そしてそれは親が性的指向を受容できるかの問題で、社会制度の改変ではどうにもならないから。
- また、そもそも世の中は生きづらく、理不尽だから。
LGBTのために税金を使う=行政が動くのは悪い
- なぜなら、大義名分がないから(たとえば「生産性」がない=少子化対策にならないから)。
LGBとTは分けるべき
- Tは「性同一性障害」という障害で、LGBは(変更可能な)性的嗜好にすぎないから。
LGBTや多様性を報道することは悪い
- なぜなら同性愛者=不幸な人を増やすことにつながりかねないから。
統計への「反論」
三重県の男女共同参画センターが高校生1万人を調査したところ、1003人の性的少数者がいた、という件についての反論。
- 世の中やメディアがLGBTと騒いだ結果、高校生のなかで「男か女かわかりません」という子が出てきたからにすぎない
- 調査の対象は思春期の不安定な時期で、社会の枠組みへの抵抗があったからにすぎない
性自認に合わせたトイレ使用への「反論」
- じぶんの好きな性別のトイレに誰もが入れるようになると、「大混乱」になるから。
反性別二元論・セクシュアリティの多様性への「反論」
- L/G/B/T以外のセクシュアリティ(たとえばQ/I/P)が多すぎて理解不能。
- 男と女、二つの性だけではいけないのか。
「ドミノ理論」
- 兄弟婚・親子婚・ペット婚・機械婚などの声が出てくるかもしれず、そういう例外を認めてあげようとなると、歯止めが効かなくなる。そしてそうすると、日本社会が崩壊してしまうから。
③ 杉田水脈議員のツイート
「チャンネル桜」の動画と新潮45の寄稿文が炎上した後、杉田議員は2つのツイートをしました。
殺害予告の後に削除しましたが。
LGBTの理解促進を担当している先輩議員が『雑誌の記事を全部読んだら、きちんと理解しているし、党の立場も配慮して言葉も選んで書いている。言葉足らずで誤解される所はあるかもしれないけど問題ないから』と、仰ってくれました。自民党の懐の深さを感じます
自民党に入って良かったなぁと思うこと。『ネットで叩かれてるけど、大丈夫?』とか『間違ったこと言ってないんだから、胸張ってればいいよ』とか『杉田さんはそのままでいいからね』とか、大臣クラスの方を始め、先輩方が声をかけてくださること
炎上の論点
それでは、どういう点で今回は炎上しているのでしょうか?
論点をまとめてみました。
政治利用するな vs 何事も政治的で、あなたも政治利用されている
こちらの論点は、次の2つのツイートに集約できますね。
パヨクたちは杉田議員を攻撃するためにLGBTを利用しただけであって、LGBTのことなどこれっぽっちも同情していない。ただ彼らの誤算は、当事者を含めて少なからぬ人間が杉田議員の主張に賛意を示したことである。結局、LGBT=面倒くさい連中というイメージが広まっただけに終わった気がする。
— ジャックの談話室 (@jack4africa) July 22, 2018
「自分はLGBT(だいたいシスゲイたまにシスレズビアン)だけどなんの苦労も感じてないから差別とか言ってるやつがむしろ迷惑」「抗議とか活動家とかLGBTを政治利用してる」って言う人、必ず、必ず!いるけど、その発言が“政治利用”されてんじゃん、と思う
— the fox (@FoxtheQueer) July 25, 2018
騒ぐべきじゃない/騒ぐからみんな偏見をもつんだよ vs きちんと反論する必要がある
「騒ぐべきじゃない・騒ぐからみんな偏見をもつんだよ」派は、「騒ぐと逆に腫れ物扱いされてしまうのだから、騒がない方がいい」という意見ですね。
逆に「きちんと反論する必要がある」派は、「すでに腫れ物扱いされているじゃん/きちんと反対意見があることを示す必要がある」という意見でしょう。ちなみにぼくは、後者の意見に賛成します。
その理由は、次のツイートが代弁してくれています。
声あげる人のおかげでどんどん肩身が狭くなって…ってツイートみたけど、1990年頃、ゲイは基本、病気か変質者扱い、思春期の頃なら不良行為だったから!それを変えようとする動きすら揶揄された時代。いろんな人がいろんなやり方で、時に身を削りながら、「肩身」を出せる場を広げてきたんだよ。
— 砂川秀樹 (@H_Sunagawa) July 28, 2018
差別などない/耐えられる差別だ vs 差別されている
「日本国民ほどLGBTに寛容な国はない」という意見と、
「現状ぜんぜん寛容じゃないし、海外との比較問題じゃないでしょ」という意見ですね。
当事者のなかでも差別を感じているのか・感じていないのかは分かれる部分があるし、各セクシュアリティごとに差別される点が違うので、なかなか難しい問題です。
(追記:2018/07/30 遠藤まめたさんが問題の核心を突かれていたので、追記します:)
同性愛者であることが運によってこうも異なるということは、自分は困りたくないという人にとっては大変不安なことなので(認知的不協和)困ってる人に問題があるとか、問題提起をないことにしたいとか、そういう心理になるのだろうね。 pic.twitter.com/tB7QqLiyaD
— 遠藤まめた@新刊でました! (@mameta227) July 29, 2018
この論点で「差別はない」と言っている側は、少し皮肉だなとぼくは思ってしまいます。
なぜなら、杉田議員が「差別意識を持って発言している」というふうにしか見えないところです。
次のツイートがその点を明確に指摘しています。
杉田水脈の例の映像でいちばんゾッとしたのは「LGBTの子どもは自殺率が6倍高い」と言ったところで杉田も周りも笑ったこと。こいつらは人の命を何とも思ってないんだ、と思った。あの笑いは「LGBTの子どもが自殺したからなんだって言うんだ」と言ってるようにしか聞こえなかった。
— ubudy (@ubudidas) 2018年7月24日
〈支援〉は不要だ vs 必要な〈支援〉もある
この論点は、〈支援〉の定義がきちんとできていないから生じている気がします。
そもそも誰も〈支援〉がほしいとは言っていなくて、「平等な権利」や「平等な教育」(LGBTをおとしめない教育)を要求しているわけなので。
たとえばYoutubeではこういう意見がありました。
ぼくは、ゲイです、今回のことについて思うことは、なんというか、別に待遇してほしい訳ではなくて、たとえば、自分の彼氏が病にかかり、その後病状が悪化した際僕らは面会ができないのです、(理解があるところはできるとおもいますが、そういうところは少ない)これは、一つの例えですが他にも問題はあります、せめて、他の人が結婚して、得るものと同じようなものがほしいとわがままながらに思います
個人的に、(これは性別違和の話ですが)性別適合手術は保険が適用されるのが正しいと思うんですよね。といっても、それは〈支援〉ではなく〈公正な施策〉だと思いますが。
〈生産性〉で優先順位をつけて何が悪いの? vs〈生産性〉で人を測るのは非人道的
前者は、Youtubeにあった次のコメントがよく説明してくれているのかな、と。
杉田さんが言ったのは、特別に重く税金を掛けるのは賛成できないといっただけでしょ。政治家は正に予算の1円でも大切に考えるもの、であるなら、B/C(Benefits/Cost)を考えるのは当然のこと。そして、普通の男女が逆差別となってしまうほどの税金を掛けることは賛同できないというのが趣旨だったと思う。
大切なのは、LGBTの人々であっても平等な権利と平等な機会が国家によって提供されること。そしてその国家の基盤は間違いなく子供であり、少子化が問題しされている現状に置いて、過重予算配分されるのはおかしい。(・・・)
他方で、「生産性で人を測るのは非人道的」派は「〈生産性〉で政策の有無/優先順位を決めるような発言」に反感を覚えていると言えます。
これは、「生産性」という基準は優勢思想的でやばい、っていう話ですね。
ところでこれ、若干議論がかみ合っていない気がします。
その原因はどこにあるのかというと、「杉田議員の差別意識を加味しているか否か」なのかな、と。
繰り返しますが、杉田水脈議員は同性愛者の自殺を「(笑)」で片付けてしまう意識をもっています。
そんな彼女が「(生産性が低いから)LGBTの優先順位は低い」と言うと、「LGBTに関する施策はこれっぽちもするべきじゃない」と聞こえてしまうわけなのです。
こういった理由から、この「生産性」発言は「ただの優先順位の問題」で片付けてしまうのはちょっとまずい気もします。
おわりに
今回の炎上って、炎上する原因が「動画」と「新潮45の寄稿文」の2つがあって、どちらを見たか(あるいは両方を見たか)によって怒る原因が違うと思うんですよね。
ゲイ当事者のぼくとしては、何よりも怒ったのは動画の方です。
だって、動画の中では「同性愛者の自殺(笑)」と笑っている杉田水脈議員がいるのですから。
人の自殺を笑うのって人間の尊厳を踏みにじっていませんか……?
……。
なんだかいつになく感情的になってしまって申し訳ありません。
以上、みんなすばるでした。
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