人間はじぶんの時間をどうするかは、じぶんできめなくてはならない(・・・)だから時間をぬすまれないように守ることだって、じぶんでやらなくてはいけない。
ーーマイスター・ホラ
『モモ』(ミヒャエル・エンデ)
あなたは、以下の4つを考えずに1週間過ごせるだろうか?
- 「忙しい」
- 「物事は効率よく」
- 「時間を無駄にしてはいけない」
- 「時間が足りない」
僕にはきっと無理だ。気づけばいつも何かに追われている。
それでも僕は、「時間の無駄」たる「読書」、それも「小説を読む」という読書をした。
手にとったのは、ミヒャエル・エンデの『モモ』(岩波少年文庫)だ。
『モモ』のあらすじ
主人公は「モモ」という浮浪児。
彼女は不思議なチカラをもっている:人の話を聞いてあげると、たちまち相手は悩みをひとりでに解決してしまうのだ。
ある日、彼女のいる街に「時間貯蓄銀行」のメンバーを名乗る者がやってくる。
彼らは「将来、時間に利子を付けて返す。だから、今は倹約してみないか?」と人びとに口説いて回る。たちまち街の人びとは、時間の節約に躍起になって……。
モモは「時間どろぼう」の陰謀を阻止するべく、冒険に出る。
『モモ』は現代の日本を描いている
『モモ』を読んでいると、ギスギスした日本人の空気の原因がわかる気がする。
時間が、暇がなさすぎるせいなのかもしれない。
— みんなすばる@リラコ (@c_hanger_itr) February 12, 2019
『モモ』では、時間の節約にひたすら精を出す大人たちが描かれる。彼らは「将来、節約した分の時間が倍になって帰ってくる」と信じて、ただただ「時間の倹約」に勤しんでいる。しかし、どう考えても彼らは生活を楽しんでいない。灰色の生活を送っている。
この様子は、現代社会・現代日本そのままだ。1973年に発表された作品にもかかわらず、驚くくらいに今のことが描かれている。
始業時間と電車のダイヤにせっつかれて生きるサラリーマン。
締切に追われる大学生。効率を迫る社会のなりたち。
それも全部、多かれ少なかれ「いつか老後になったら、ゆっくり暮らせるんだ……」的な幻想に励まされて、灰色の生活をおくるのだ。
僕達は「時間どろぼう」に騙されていないか?
時間にシビアに生きる、というのは精神的にかなり辛い。
僕自身、『モモ』を読み始めた頃は、「すべての生活の時間を、生産的に使わなきゃいけない!」と躍起になっていた。けれど、それを実際にやろうとすると、
「ああ、本を読んでいるこの時間は無駄かもしれない」
「漫画なんか読んでいる暇があるなら、仕事をやるべきだ」
というふうに罪悪感がよぎってしまうのだ。
だからといってすべての時間を「生産性」に投じても、待っているのは虚しさだけ。
心に余裕がもてなくなり、僕達はイライラしていく。ギスギスしていく。
いくら時間を「有効に」使おうと思っても、その時間が楽しくなければ意味がない。楽しくない時間は、時間を殺しているのだ。だから、『モモ』の次の一節はほんとうに真理だと思う。
時間とは、生きるということ、そのものなのです。そして人のいのちは心を住みかとしているのです。
人間が時間を節約すればするほど、生活はやせほそっていくのです。——『モモ』(ミヒャエル・エンデ)
「人間のために時間がある」のであって、「時間のために人間がある」わけではないということを肝に銘じるべきかもしれない。
僕達は、「時間どろぼう」に騙されてはいないだろうか?
時間に焦る人にこそ、おすすめ
いつも時間に追われている人にこそ、僕は『モモ』をおすすめしたい。
締切や納期に間に合わせることよりも大切なものを、きっとこの本は教えてくれる。

以上、みんなすばるでした。
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