本・漫画

『モモ』(ミヒャエル・エンデ)は今こそ読むべきだと思った件

 人間はじぶんの時間をどうするかは、じぶんできめなくてはならない(・・・)だから時間をぬすまれないように守ることだって、じぶんでやらなくてはいけない。

ーーマイスター・ホラ
『モモ』(ミヒャエル・エンデ)

あなたは、以下の4つを考えずに1週間過ごせるだろうか?

  • 「忙しい」
  • 「物事は効率よく」
  • 「時間を無駄にしてはいけない」
  • 「時間が足りない」

僕にはきっと無理だ。気づけばいつも何かに追われている。

それでも僕は、「時間の無駄」たる「読書」、それも「小説を読む」という読書をした。
手にとったのは、ミヒャエル・エンデの『モモ』(岩波少年文庫)だ。

『モモ』のあらすじ

Photo by Luisa Azevedo on Unsplash

主人公は「モモ」という浮浪児。
彼女は不思議なチカラをもっている:人の話を聞いてあげると、たちまち相手は悩みをひとりでに解決してしまうのだ。

ある日、彼女のいる街に「時間貯蓄銀行」のメンバーを名乗る者がやってくる。
彼らは「将来、時間に利子を付けて返す。だから、今は倹約してみないか?」と人びとに口説いて回る。たちまち街の人びとは、時間の節約に躍起になって……。

モモは「時間どろぼう」の陰謀を阻止するべく、冒険に出る。

『モモ』は現代の日本を描いている


『モモ』では、時間の節約にひたすら精を出す大人たちが描かれる。彼らは「将来、節約した分の時間が倍になって帰ってくる」と信じて、ただただ「時間の倹約」に勤しんでいる。しかし、どう考えても彼らは生活を楽しんでいない。灰色の生活を送っている。

この様子は、現代社会・現代日本そのままだ。1973年に発表された作品にもかかわらず、驚くくらいに今のことが描かれている。

始業時間と電車のダイヤにせっつかれて生きるサラリーマン。
締切に追われる大学生。効率を迫る社会のなりたち。

それも全部、多かれ少なかれ「いつか老後になったら、ゆっくり暮らせるんだ……」的な幻想に励まされて、灰色の生活をおくるのだ。

 

僕達は「時間どろぼう」に騙されていないか?

Photo by Buenosia Carol from Pexels

時間にシビアに生きる、というのは精神的にかなり辛い。

僕自身、『モモ』を読み始めた頃は、「すべての生活の時間を、生産的に使わなきゃいけない!」と躍起になっていた。けれど、それを実際にやろうとすると、

ああ、本を読んでいるこの時間は無駄かもしれない
漫画なんか読んでいる暇があるなら、仕事をやるべきだ

というふうに罪悪感がよぎってしまうのだ。

だからといってすべての時間を「生産性」に投じても、待っているのは虚しさだけ。
心に余裕がもてなくなり、僕達はイライラしていく。ギスギスしていく。

いくら時間を「有効に」使おうと思っても、その時間が楽しくなければ意味がない。楽しくない時間は、時間を殺しているのだ。だから、『モモ』の次の一節はほんとうに真理だと思う。

 時間とは、生きるということ、そのものなのです。そして人のいのちは心を住みかとしているのです。
人間が時間を節約すればするほど、生活はやせほそっていくのです。

——『モモ』(ミヒャエル・エンデ)

人間のために時間がある」のであって、「時間のために人間がある」わけではないということを肝に銘じるべきかもしれない。

僕達は、「時間どろぼう」に騙されてはいないだろうか?

 

時間に焦る人にこそ、おすすめ

いつも時間に追われている人にこそ、僕は『モモ』をおすすめしたい。
締切や納期に間に合わせることよりも大切なものを、きっとこの本は教えてくれる。

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以上、みんなすばるでした。

 

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